journal vol.01

ーサフィラン社についてー

 

 

ーリネンとは何かー

人はフラックスの繊維を発見し、リネンの作り方を編み出しました。
以来数万年経った今日も、人はリネンを作り続けています。
リネンとは人間がフラックスの繊維を使って作り出すものの名前です。すなわち糸、布、服になったものがリネンです。人間の仕事によって、フラックスはリネンになります。
日本においては、フレンチ、アイリッシュ、ベルギーのようにヨーロッパの国々をリネンの接頭句に用いて品質や物語を謳う場面が多く目につきます。しかしリネンというものの定義を考えるなら、重要なのは原料の産地ではありません。
植物であるフラックスがリネンという製品になっていく過程には、栽培、原料加工、紡績、製織、染色加工、縫製と、様々な段階があり、たくさんの人間の手を必要とします。「誰が」「どのように作ったのか」という具体的な事実こそ大事です。リネンを作った人間とその仕事にこそリネンの価値基準を置くべきではないでしょうか。

ーリネンは人が作るものー

 

その意味を象徴する企業があります。
Safilinはフランス革命前の1778年、北フランスのフランドル地方で創業されました。
ルイ16世の庇護を受け、ナポレオン軍の装備品を製造したという歴史を持つSafilinは、240年の歴史を生き抜いてきた地球上最古のリネン紡績でありながら、卓越した技術と品質を武器に現在もなおリネン業界をリードする稀有な企業です。
多くの工程と多くの人手を必要とするリネンはコストという一面で見ると非常に非効率的な素材です。リネンが繊維の主役であった時代は遠い昔。時代の流れとともに安価な綿や合繊にとってかわられ、今や繊維全体に占めるリネンの割合は1%程度にすぎません。
リネン業界が生き残りをかけ、安くて豊富な労働力を求めて中国に生産をシフトしていった時代も、Safilinはヨーロッパを拠点とし、古くから受け継いだ生産方法をかたくなに守り続けてきました。たくさんの従業員を長く雇用して技術の維持・伝承・向上を図り、古い設備を大切に使用し続け、より安く作るためではなく、より良い糸を作るための工夫を重ねています。
中国製のリネンが安価に大量に出回るようになり、リネンは季節性・趣味性の高い高級素材から、手ごろでカジュアルな夏の定番素材という位置づけに変わりました。そこからの脱却を意図して「フレンチリネン」的な差別化の動きも広まりましたが、表層だけを取り繕ったプロモーションはいずれ限界に達します。大量生産の時代は去り、これからは本質が重要になる時代です。
中国糸との価格競争にも背を向け、古くからの生産方法を頑なに守り、磨き続けてきたSafilin。一見非効率的で古臭く見えるその仕事が今や輝きを増し、Safilinを孤高の高みに押し上げています。

Safilinはリネンの正統を現代に受け継ぐ企業です。240年にわたってリネンを作り続けてきたその仕事の一端をここに紹介します。

 

 

ーフラックスを選ぶー

 

リネン糸の生産量で考えると、世界のリネン生産の中心は中国です。
中国製のリネン糸は今や世界生産のおよそ9割を占めています。生産能力、価格対応力は圧倒的で、本家とも言うべきヨーロッパの歴史あるリネン紡績は中国勢との価格競争に巻き込まれ、数十年に渡って弱体化する傾向にあります。
一方で、リネンの原料であるフラックスは今なおヨーロッパが生産の中心です。中でもフランスは全世界のフラックス生産量の約8割を占める大国です。
日本でいう「フレンチリネン」とは、フランス産のフラックスを中国で紡績したものを指している場合がほとんどです。
フランスが原料の8割を作っている状況では、大多数のリネンが「フレンチリネン」になってしまうことになります。またフラックス繊維が加工されて「リネン」となった場所はどこかというと、紡績工場のある中国となり、「フレンチリネン」という言葉もあやふやになってきます。リネンの差別化としては、あまり意味がありません。
そもそもフランス産のフラックスが100%高品質なわけではありません。必ず品質の優劣があります。そして、高品質な糸を作るためにはフラックスの選定が必要です。良いフラックスを間違いなく入手するためには、人間の目が重要となります。
Safilinが創業し、今も本社を置く北フランス、フランドル地方は当時も今もフラックスの一大産地です。

 

フラックスの畑の中でリネン糸を作ることを始めたSafilinは、フラックスという植物繊維を理解することにおいて、他社の追随を許しません。
社長自ら年に何度もフラックスの産地に飛び、農家とも直接顔を合わせて意見を交換し、原料の生育状況、品質に気を配っています。Safilinのフラックスの選別は、単純に繊度や均質性など表面的な数値では言い表せません。長年積み重ねた経験でしか測りえない感覚的な仕事です。長年に渡りSafilinと取り組みを続けてきたフラックス農家や原料加工工場もSafilinの意図や要求を良く理解し、Safilinに適した良質な原料を優先的に確保します。
そうしてフランスやベルギーなど様々なフラックス産地から吟味して買い付けてきた様々なロットのフラックスがSafilinに集められます。その量およそ1年分。中国の紡績会社が約3ヵ月分の所要量しか在庫をもたないのに比較すると、非常に大量のストックです。これは原料品質の変動に対し、常に配合の比率をコントロールしながら、一定の品質の糸を安定して生産し続けるためのSafilin独特の方策です。
中国のメーカーは年や時期によって糸品質が大きく上下することがありますが、Safilinの糸はたとえフラックスの作柄が悪かった年も一定のレベルをキープすることができます。
糸を作るために農家ともコンタクトを保つ。
Safilinの糸づくりはすでに畑の上から始まっているのです。