journal vol.05

―天幕―

天幕」という言葉をご存じですか?

天幕とは雨露をしのぐために野天に張る幕、すなわち「テント」のことです。

あまりなじみのない言葉ですが、陸上自衛隊ではテントのことを今でも「天幕」と呼びます。
「天幕」は国の防衛や災害派遣など陸上自衛隊が活動するさまざまな任務で活用されています。

リネンを含む「麻」は、天然繊維の中で最も高い強度を持つ素材です。

今の時代、「麻」は、主に衣料品や寝具などに用いられ、ナチュラルで優しいソフトなイメージです。
しかしながら、かつては高強度でハードな用途に多く使われていました。
現代社会においてナイロンやポリエステルなどの合成繊維が担う役割を、麻が果たしていたのです。

帝国繊維の前身である帝国製麻(明治40年設立)は国内でリネンを製造し、天幕、トラックの幌、軍服、消防ホース、郵便用郵袋、など、強度が求められる多くの繊維製品装備品を生産して国を支えました。
それらの多くは時代の流れとともに消え、あるいは合繊にとって代わられましたが、絶滅寸前の「強い麻」は陸上自衛隊の天幕として今もしっかりと生き残っています。

 

『帝国製麻株式会社三十年史』より 発行:昭和12年10月30日


陸上自衛隊が使用する天幕は、大きく分類して「宿営用天幕」と「業務用天幕」があります。

宿営用天幕は隊員が寝泊まりするために使います。
設営と撤収が頻繁に行われる為、比較的やわらかく、扱いやすくできています。

一方、業務用天幕は隊員が業務を行うためのものです。

G=業務用
T=天幕
I=improvement(改良型)

GTIという生地名はこれらの頭文字をとった通称です。

業務用天幕は国の防衛、災害派遣など多くの任務に使われます。事務所、物資の倉庫、診療所など、状況に応じてさまざまな使われ方をしています。その使用目的上、一度設営されると、ある程度の期間建てられたまま使用されます。
GTIは加工技術を駆使し、防水、防炎、防黴などの機能を備えたハイスペックな生地です。さらに麻は通気性に優れた天然の機能繊維でもあります。陸上自衛隊が活動する過酷な屋外環境に耐え、通気性によって屋内環境を快適に保って隊員を守ります。

GTIを使用したトートバッグ


デザイン目的での加工ではなく、人の命を守るための防衛目的で作られたGTI。

シンプルで、存在感が強く、説得力に満ちた素材です。
ファッション、古着、海外の軍物などとはまた違った世界を感じます。

GTIはこれまで一般市場に出たことはありません。しかし、かつて日本を支え、いまも国民を守るために活躍する麻に触れていただきたく、プロジェクトを立ち上げました。

麻の天幕には、皆が知らない麻の世界が詰まっています。
第一弾は11月に販売開始予定です。

商品の詳細はこちらから→GTI tote